勉強できる子の親ほど「学校の勉強」を重視する理由は? 小学校低学年の学習サポート

和田秀樹

小学校に入学した後でも、勉強を学校任せにせずに親が見守ってあげることが大切です。子どもの勉強意欲を高める家庭学習の方法とは? 和田秀樹さんが紹介します。

※本稿は和田秀樹著『勉強できる子が家でしていること』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです

一人で教科書を勉強させず、親が手伝いながらどんどん先へ進む

小学校入学後の勉強では、国語の場合は、教科書を読み進ませることが基本になります。どんどん読ませていけば、1年生の教科書であればだいたい一学期で全部読めてしまうはずです。

1年生の教科書というのは、絵本のレベルよりずっとやさしくて、内容も簡単なものばかりですから、どんどん先まで読ませ、「簡単だ」という感覚を持たせてよいと思います。

ただ、一つ問題があるとすれば、それは日本の教科書が自学自習に向かないようにつくられているという点です。

外国の教科書というのは、分厚くて、説明が非常に多く書いてあり、できる子は自分で読んで、どんどん先に進めるようになっていますが、日本の教科書は、学校の勉強が簡単すぎて授業を軽視する子どもが出てくるとよくないということで、先生が教えなければわからないようにつくられているのです。

どんどん先に進んでいってしまう子をつくらず、平均的なレベルでの画一的な授業を推し進めようという教育政策が影響しているということです。

教科書のせいで、子どもの意欲や成長の芽を摘まれてはたまりませんので、一人で取り組ませるのではなく、親が手伝ってあげながら、どんどん先をやらせましょう。

ただし、先に進んでいくということ自体はよいことなのですが、一度やったことを「もう忘れちゃった」というのでは意味がありません。新しいことを覚えていくと同時に、これまでに習ったことをきちんと覚えているかということをチェックしてあげる必要があります。

それには、親子のコミュニケーションをかねて、読み書きのテストをたびたびやってあげるというようなことが役に立ちます。学校であまりテストをしてくれない場合には、とくに重要です。

学校任せ、教科書任せにせず、親が丁寧に教えてあげて、何回もテストしてあげるということが小学校低学年のうちには重要なのです。そういう意味では、小学校入学後も、まだ当分の間は、教師としての親の役割が続きます。

学校の勉強をなめさせるな

親が手伝って、どんどん先を勉強させていくと、「学校の勉強は簡単すぎてつまらない」という感覚を持つ子も出てきます。

しかし、学校の勉強をなめてしまうと、先生の話を聞かないようになってしまいます。その結果、気づいたときには学校の授業についていけなくなっていたなどということが出てくる可能性がないとはいえません。

ですから、おさらいの大切さをきちんと子どもに諭しておく必要があります。小学校1年生くらいですと、まだ復習や、おさらいという概念がよくわからないかもしれませんので、別の言い方で工夫をしてみましょう。

たとえば、「一回覚えたことを、もう一回聞くとすごく頭がよくなるんだよ」とか「学校というのは、授業を聞くところなんだから、いくら簡単なことでもきちんと聞きなさい。パパやママとは違う教え方をするかもしれないから、そうしたら教えてね」などいろいろな理屈が考えられます。

親がどんどん先を教える場合でも、「学校の授業をきちんと聞く」という態度だけは身につけさせておきましょう。そういう基本的な授業態度やマナーを守らせたうえで、家庭内では学校よりもどんどん先に勉強を進めていけばよいのです。

学校であったことを話させる習慣をつける

学校でどんなことを習っているのか、それを簡単と感じているのか、難しいと感じているのかなどを知るためには、その日に学校であったことを、必ず話す習慣を身につけさせておくことが重要です。

その日に学校であった出来事、とくに楽しかったことを話させて、学校をおもしろいと思っているのかどうかということを確実にチェックしておく必要があります。

つまらないと感じているようであれば、それは友人関係がつまらないのか、勉強がわからないからつまらないのかということを、話を聞いて探っていきます。勉強でつまずいているようであれば、「今日学校で習ってきたことを教えて」と聞いてみれば、本人が中途半端にしか理解していないことについてもきちんと把握できるものです。

ただし、子どもの話を毎日聞いてあげるというのは、親にとっては根気のいることです。子どもがかわいくてかわいくてしょうがないうちは、何を聞いても楽しいのですが、小学校低学年の会話には、大人から見ればレベルの低い話がたくさん出てきますし、ともかく授業の進み方はおそろしく遅いのですから、毎日の授業の話を聞いていたら、「子どもの話は退屈だ」と感じてきてしまいます。



たとえ、1日目はおもしろそうに聞けても、2日目も3日目も同じような話をされるのですから、だんだんとつまらなくなります。しかし、そこでつまらなそうな顔をしてはダメで、つまらないと思ってもきちんと話を聞いてあげることによってはじめて、親に話をする習慣が生まれてくるのです。

話を聞いてみて、新しく習ったことがわかるようになった感じであれば褒めてあげ、勉強を難しく感じ始めていそうだと思ったら、「じゃあ、ママがちょっと問題つくってあげるからやってみようよ」などと言って、その部分をきちんと確認していきます。

「なあんだ、習ったのにできないじゃん」というような気軽な感じでさらにコミュニケーションを深めていけば、子どももどんどん話をするようになりますし、勉強でのつまずきをいち早く発見することもできます。

このようなコミュニケーションを続けていれば、急に話をしなくなったときに、「何かあったんじゃないか」などとすぐに察知できるようになります。勉強がわからなくなったのかもしれないし、友だちとけんかをしたのかもしれない。あるいは、いじめにあっているのかもしれません。

家に帰ってきて必ず学校のことを話すような親子関係をつくっておけば、学校でいじめられている場合などにも、その兆候を早いうちからとらえることが可能になってくるでしょう。

私はソロバン、弟は公文をやったら、計算がおっくうでなくなった

計算は、速くて正確にできるようになることが目標ですが、それよりも重要なことは、「計算をおっくうがらないようにさせる」ということです。

これは、中学校受験や高校受験をさせるようになるとわかることですが、計算をおっくうに感じている子は、あきらめがすごく早くなってしまう傾向が出てくるのです。

問題の解き方はわかったのに、そのあとの計算がちょっと複雑になると、時間がかかってしまってやる気を失ってしまったり、自分の解き方がうまくいかないときに、何度も計算するのが面倒なので、次のやり方を試す気にならなくなってしまったりするということが出てきます。

計算をおっくうがらせないためにも、計算を得意だと思い込ませるような方法、計算を楽しいと思い込ませるような方法で、勉強をさせることが必要なのです。私の場合は、小学校3年生のときに、ソロバンをやっていました。

基本的にはソロバンというのは、頭を使って覚えるものではなく、体で覚えるものです。私自身も頭を使っているというような感覚はまったくありませんでした。指のトレーニングのような感覚だったといったほうがいいのかもしれません。

ソロバン塾では、五桁、六桁の足し算、引き算を暗算でやらされていましたし、読み上げ暗算では、掛け算まで暗算でやらされていました。そうするうちに、四桁×四桁という計算でも、ソロバンの珠が頭の中に浮かんできて、すぐに答えが出るようになりました。計算しているというよりも、自然に答えが浮かんでくるようになったのです。



一方、私の弟は、この時期に公文式学習法をやっていました。公文式のよいところは学年の枠がないということです。3年生でも、3年生用のカリキュラムが終われば、4年生用、5年生用とどんどん上がっていけます。ある種の「飛び級」ができるのです。

子どもとしては、3年生のときに「自分はもう五年生の勉強をしている」という感覚がとてもうれしいものとなります。誇りが持てるのです。弟は勉強ができるほうではありませんでしたが、公文式は喜んでやっていました。

たまたま、私や弟は、ソロバンや公文式をしていたというだけの話ですが、もし、子どもが嫌がるようでなければ、こういうものを取り入れるのも、計算をおっくうがらせないための一つの選択肢といえるかもしれません。

勉強できる子が家でしていること 12歳までの家庭教育マニュアル

『勉強できる子が家でしていること 12歳までの家庭教育マニュアル』(和田秀樹 著、PHP研究所刊)

著者は学生時代、「勉強は素質だ」とあきらめていたところ、勉強法を変えることで成績が伸びて、東京大学に合格した経験があります。「子どもに合わない勉強法で劣等感を持たせるよりも、子どもに合ったやり方を見出して勉強をさせれば必ず伸びる」というのが、著者の強い信念です。それができるのは、家庭の働きかけがあってこそ。

中学受験する子も、しない子も! 子どもにとって“最後の砦”といえる、家庭で心得ておきたい「令和版・和田式勉強法」をお届けします。